2008年08月06日
僕が不動産ビジネスであたり前だと思うことについて(書評・感想)
僕が不動産ビジネスであたり前だと思うことについて(松岡哲也著)を読む。業界に入ればいるほどあたり前は変わってくるし、会社の常識は社会の非常識になっている。そんな不動産についてのあたり前をエッセイ風にまとめたのが本書。- まえがきにかえて
- お客様は2階に上がらない
- 天井の高いは七難隠す
- ショーウィンドウは前面通りに近づける
- 店員のコロコロ変わる高級店は廃れていく
- 人はみな特権階級に憧れる
- 土地を買って、土地を貸す
- テナントはいつまでも居るわけではない
- 迷路のある建物では、モノは売れない
- オフィスビルは入居者が見栄を張る道具である
目次がほぼ著者が言う当たり前で、いくつか「あ〜言われてみれば」というものとそれは違うんじゃねといういうものがある。
著者は商社系不動産ディベロッパーに就職後、2000年に独立、07年に名証に上場を果たした。ギリギリで上場を果たし、後1年遅かったら上場が難しかったかも知れない。
本書の良さは、著者の学生時代の回想。
まだ、日本の路面店には路面の高級インポートブランドの専門店はなくてビギ、ワイズ、〜中略〜、日本のファッションブランドが一つのビルに入っていたりした。P017
著者は私よりかなり年齢が上なのだけれど、それでもその断片は残っていた。もう廃墟寸前のDCビルがあった。それがたぶんバブルの残骸というか、予兆していたのかも知れない。それでも大学時代には(年下なのに)ワイズ君はいたし、高額で不便でへんてこりんなファッションも買っていたものだ。そういう郷愁にふける。
本書で指摘されている土地を買って土地を貸すというビジネスモデルはどうなのか。
では土地だけ購入し、その土地をテナントに貸し、建物や施設をテナントに作ってもらえばどうか。P56
商業施設ではこの方法によりかなりリスクが軽減される。土地は値下がりはしても一応傷まない。ここ10年では賃貸住宅を中心にさらに不動産ビジネスはリスクをとらなくなった。「いい部屋」や「夢中でがんばる」人たちが住む住宅だ。これらの賃貸住宅は相続税軽減や資産活用を一括借上保証をうたい文句に建主を募集し続けている。これらはファイナンスのリスク(金利上昇リスク)のみ建主がおうように見える。が実際には家賃の下落リスクも負う。端折る。
もっとも建築時に十分抜いているし、さらに管理料から、また実際はまわりの満室のアパートを含め物件全体で(つまり家賃=建主の手取りではない)支えている。全体が下がれば手取り収入は減るという具合だ(もちろん、個別の交渉はあるだろう)
- テナントはいつまでも居るわけではない
いくらリストアしても、法律上築年数を掲示する必要があるから家賃を下げるしか入居率を維持する方法はない。すべてを押し付けるこのビジネス・モデルも行き着くだろう。
それなのに、消えてなくなる建物に投資し、その借金を返し続けている。どう考えても、理屈に合わない、と私には思える。P59
そういえば、ここ十年ほどで、二十代男性の髪の分け目も消えてしまった。P101
さらに10年後にはどうなっているだろう。誰も予想はできない。ただ、感覚的にあたり前だったことが、まわりの環境で見失われる。どこの業界もいればいるほどあたり前が失われる。そういうどの業界も長くなってきた人には良い一冊だと思う。
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