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2008年09月19日

部下を動かす教え方(書評・感想)

いつも仕事に追われている上司のための 部下を動かす教え方(松尾昭仁著)を読む。
部下には3種類。1.教えなくてもできる部下、2.教えてできる部下、3.教えてもできない部下。
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  • はじめに
  • 第1章 「教える」ことで、あなたも組織も成長できる
  • 第2章 部下を「一人前」に育てる
  • 第3章 部下の「自信」と「やる気」に火をつける教え方
  • 第4章 どんな部下にも効果がある「タイプ別」の教え方
  • 第5章 「多く部下」を一気にレベルアップさせる教え方
  • おわりに
日本の多くの管理職が、プレイングマネージャー、場合によっては単なるプレイヤーが多い。プレイヤーでの優秀さの延長上にマネージャーがあるから仕方がない。

とはいえ、帯の通り
「自分でやったほうが早い」と思うあなたは上司失格!

はその通りだと思う。部下が多くなるほど、自分で処理できる量は知れていて、人を使ってレバレッジをいかにきかせるか?がさらに上のマネージャーになるための要件になる。

本書の対象は1〜2である。2と3の見分けであるが、これは年齢とともに比例すると考えていいだろう。ただ3の人でも教えないというわけには行かない。

本書は教え方についてはよくまとまっていると思う。

一度に教えるポイントは3つまで

私の経験上、一度に教えるポイントは多くても3つまでです。相手の理解力や意欲によっては、1つの大事なポイントを教えるのが精一杯ということもあるでしょう。P043

こういうことは会社に入って長い人や、短い時間で多くを教えたい先輩や一生懸命な管理職が陥りやすい罠なので「あ〜何を今さら」でも本書で確認しておくといい。

また、経験値も舐めたものではないので、教えることがないということはない。自分の中のたな卸しができていないだけ。

とはいえ、1年や2年の経験値が違うだけで、優秀な人材を指導・育成は難しい。とりわけ、管理職は修羅場に自ら足を踏み入れ、だいたいのオチを経験しておかないと後が困る。勉強も常に先んないと「教えること」は到底不可能だ。

ただ、経験値の陳腐化は年々早まっているので、それだけに学習する重要は高まる。教える立場でも「答えそのもの」を知ってるケースはレアで、ケースバイケースに対処する根本的な考え方とか取り組みを教えることにとどまる。

話は飛ぶが、マネージャーに一番重要なことは何かなと考えていた。それは結局「人格」だろうと考えていた。

与えられた立場はあくまでその組織内でのみ通用するものです。そのことを忘れて、年上の人間を軽く扱うようなことは慎むべきです。P135

ずいぶん軽く扱った時期があったと反省する。しかし、相手もさるもの、軽く荒く扱われても十分に耐えうる術を持った人たちではあったわけだが、あれはいかん。上に行けば行くほど人格が問われる。優しくて甘いだけでも人格者として教わる気がしない。尊敬の念を持てる人でないと習う気がしない。

組織内で「人格」というのはなんだろう。

人格とは平素の行動である。

自分の出世やキャリアを真ん中に持ってきたり、退職金をいかに持ち帰るかを考えている人たちではとても人はついてこない。

リーマンをはじめとした金融不安も案外が「人のエゴの集積」gが起こしたのではないか?

アメリカの夢:内田樹の研究室

無意味にえらそうにしている人間がそこここに目に付いたら、その組織は「末期的」であると判じて過つことがない。「えらそう」に見えるのは、外部評価と自己評価の差が大きいせいである。「自分の能力は過小評価されているのではないか」という不安をもつ人間は、自分への敬意を喚起するために「わずかによけいな身ぶり」をする。「えらそう」というのはその「わずかによけいな身ぶり」のことである。

教えるという行為そのものが権威をまとう。立場を超え「えらそう」は反感を買うばかりか、結局人が動いてくれなくなる。

別の本で「人はインセンティブと性格の奴隷である」と書かれていたが、金銭とか出世というインセンティブは弱い。

もっとも強いインセンティブとなりえるのはマズローの言うとおり、自己承認欲求だろう。それは尊敬する上司などから認められるとき。それが結果的に昇進につながればなおよし。

人格者というのはつまるところ、他者を認める能力であろうと思われる。それは「尊重」というもなろうが、自分と異質なものでも認める能力であろう。

どのような制度や職場環境が必要ですか?(日経BPコンサルティング)

  • 公平な評価制度          66.2%
  • 活発な職場のコミュニケーション  60.2%
  • 管理職研修や育成制度の充実    40.4%

このように十分に「認められていない」という気持ちが職場に蔓延している。一方で「自己の過大評価」も拡大していることだろう。

人に教えることは難しいが、自分の理解を深める上でも重要なことだ。公平な評価は時に「自己の過大評価」を修正することにもなる。

他者を認めることがもっとも重要に思える。人に教え、それを実行してもらうもっとも重要なインセンティブは「誰かのため」だ。その誰か大事な人のためとか人格者のためであり、それが組織を動かす。

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1. 『部下を動かす教え方』松尾昭仁(著)  [ 知識をチカラに!ビジネス書の書評・ビジネス誌・テレビ メルマガブログ ]   2008年09月19日 10:20
 ⇒『いつも仕事に追われている上司のための 部下を動かす教え方』    松尾昭仁(著)    http://www.bizpnet.com/book/2008/07/bukaosi.html ??????...
2. 「分かりやすい教え方」の技術(書評・感想)  [ blog50-1 ]   2009年02月09日 20:17
「今年の新入社員は馬鹿が多いんじゃないか?」噛み砕いて説明しても説明してもわからない生徒たちを抱えた課長が愚痴をこぼしていた。「数をとると一定数理解がすすまない人はいると思いますが、全般にレベルが低いということは考えにくいですね。むしろ....

この記事へのコメント

1. Posted by そふ   2008年09月22日 21:58
そのときは多少時間はかかっても、きちんと教えることは、あとあと有効になってくると思うのです。
今この瞬間のわずかな時間を惜しむことが、上司自身の、そして部下の時間を浪費することになる…と思ってるんですけど、なかなか上司には伝わらない。
教えないってことは、そこで知識や情報、ノウハウが断絶するってことで、それはあなた(上司)の持つモノがそこで終わるってことですよ?と言いかけてやめたことがある。
2. Posted by マリンゾウ   2008年09月22日 22:27
そふさん おっしゃるとおりだと思います。教える言葉をもたない管理職も多く、習いたいと思っている若者も多いのが実感です。
できないところを見つけては論う悲しい上司がいるのが実情です。

前に書いたことがあるんですが、教師は会社に、会社員は教師になってみるといいと思うんです。

教師は教わるという部分で、会社員教えるということの難しさと感激が感じられるからです。

双方とも耐えられないくらいしんどいかもしれませんが。

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