aamall

2008年11月23日

不機嫌な職場(書評・感想)

組織の変更により事務量は増え、知らない者同士がお互いの力量を測りながら、牽制し、嘲笑し合う。不機嫌な(私の)職場はここ数年でかなり回復した感がある。

しかし、実感できない好景気に支えられてきたことを当社の方々は認識できないようである。

燻っていた火種はこの世界的な不況期に再燃するだろう。

不機嫌な職場~なぜ社員同士で協力できないのか (講談社現代新書 1926)を読む。
不機嫌な職場~なぜ社員同士で協力できないのか (講談社現代新書 1926)

  • 第一章 いま、職場で何が起きているのか
  • 第二章 何が協力関係を阻害しているのか
  • 第三章 協力の心理を理解する
  • 第四章 協力し合う組織に学ぶ
  • 第五章 協力し合える組織をつくる方法
  • 最終章 協力への第一歩の踏み出し方
「労使協調、年功序列、終身雇用」日本の雇用環境における3種の神器は20年前には綻びを見せていた(※1)。しかし、バブルでほころびは帳消しになって、10年は雇用環境の変化を遅らせてきた。

バブル崩壊。

本来すべき変化をなおざりにしてきたのだから、急ごしらえで変える必要があった。
そんな状況の中、まじめな人、自分でどうにかしなければと責任感の強い人からつぶれていく。
精神的あるいは体力的に追い込まれ、休職や退職する人まで出てきてしまった。何かがおかしい。P12
この数が大きく増えた原因には大きく変化させる上での軋轢が原因であったように思う。
実は、日本企業の大きな特徴は、仕事の範囲の「緩さ・曖昧さ」にある。P40
この緩さの中で突如成果主義的な制度がはじまった。もともと仕事の範囲緩いから、「できる人はできない人の尻拭いに奔走し、かつ自身も成果を上げる」なんて善人ほど損をする制度ができあがった。

一方で、自身の成果ばかり考える人(これを日本の職場では身勝手な人という)にとっては都合のよい制度だった。ガシガシ営業すれば、それが評価される。後工程の人の仕事がたいへんになっても、自分の成果があがればそれは評価に直結する。後は野となれ山となれ戦略。

善人はつぶれ、悪人が残る。普通の人は閉口する。悪貨が良貨を駆逐した。

かくして短期間に「不機嫌な職場」は完成した。

悪貨は悪貨と見抜く長がいた部署はその災難から免れたし、悪貨でも千円は千円だ!と成果のみに着目した長のいる部署は善人から退出した。

もともと、日本人は義務や権利、責任なんかの範囲を曖昧にさせておく方がよいと考えているように思う。稟議書なんて山ほど印鑑を並べて誰が責任者かを曖昧にしてある。

「成果」なんて仕事の中の表層でしかない。

そもそも一人で完結する類の仕事、例えば生保の営業とか、ハウスメーカーの営業、なんかは歩合給などのインセンティブ構造があった。それ以外は分けにくい(範囲を明確にするのは面倒だ)だから「どうせ終身雇用だからできるかできないかのレピュテーションなんて後でわかるよ」四半期・半期ごとの評価すらちゃんとしてこなかった。

まずここから整備する必要がある。

本書ではグーグル、サイバーエージェントなど若い企業を取り上げて協力しあう制度を紹介する。
もう一つ、独特の仕組みがある。「二駅ルール」というものだ。〜中略〜会社の近くに住むことを奨励する仕組みである。P120
なるほど、若い企業ほど仕組みをたくさん作って社員同士の協力体制を作ろうと努力している。

しかし、制度がないところで制度を作る方が、「企業に巣くう制度を変える」よりはるか簡単だということに留意する必要がある。

その制度もいつか制度疲弊を起こす。企業が歴史を重ね、社員の年齢層が散らばってくると、協力体制を築くための制度が「うざい制度」になっていく。

若者に似合うファッションがあなたに似合うとは限らない。

成果主義と同じで分析もせずに導入すれば失敗することは請け負う。

とはいえ、十分咀嚼できればあなたの会社を変えるヒントになるかも知れない。

期間工、派遣社員、パートなどの削減だけでは今回の不況を乗り越えるのは難しくなりそうだ。
今度こそ労使協調、年功序列、終身雇用を崩さなければいけなくなる。

どこからどういう風に手をつけていくか?たぶん最大の被害者はここ数年の新卒者とこれから採用するであろう学生たちとなる。知らない者に冷たくあたるのは簡単なことである。

高級車で送り迎え(※2)してもらっている経営者はそうやって不機嫌な職場を作る。

「ES(従業員満足)なくしてCS(顧客満足)なし」もまた事実。痛みを伴う改革は自らを律することからしか誰も納得はしない。賞与を減らすときには「至らずすまん!」と責任を明確にするくらいの気概が必要な時代だ。「アメリカの金融危機に端を発する・・・」なんて外部環境のせいにしても社員を閉口させるばかり。

たぶん偉くなればなるほど、納得を得られないまでも自ら説得する姿勢が必要になる。

暗雲立ち込める職場の中で、自らは機嫌よく仕事をし、また機嫌のよい環境を整えたいと思う。

いいときは経営なんて誰がしても同じである。悪いときほど手腕が問われる。手腕を磨くために本書くらいは読んでほしいと思う。

※1年功序列制度を変えるために30年くらい前から職能資格制度などが中小企業でも導入されており、役職者定年制度などの検討がなされた。平成4年までのバブル期の大量採用により企業のピラミッド構造が維持されたため、職能資格制度も実質的に年功序列制度と同様の運用がされるようになった。

※2大きな企業経営者の場合、事故を起こされた時の損失が運転手の賃金よりも大きくなるので運転手つきはやむを得ないと考える。しかし、LEXUSとかベンツなどである必要はまったくない。


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