2008年12月18日
今日から当社は同一労働、同一賃金とします
アルバイト、パート、期間工、派遣の方は皆喜ぶ。となりで働いていた「とろい親父正社員」と同じ給料になるのだ。
人事異動はたいへんだ。部署が異動になるだけで、正社員は給料が増減する。
給料が下がる部署か?上がる部署か?一喜一憂。給料の下がる部署へ行った優秀な社員は転職を考え、上がる部署へ行った阿呆な社員はできる限りその部署に留まろうとする。
- アルバイト、パート↑
- 期間工、派遣 ↑
- 正社員 若手 →
- 正社員 年寄 ↓
- 管理職 若手 →
- 管理職 年寄 ↓
たぶん、こういう感じの給与になる。
年寄は総じてやる気をなくし、非正規社員がバリバリ働く職場が出来上がる。給料が上がる見込みで我慢汁していた若手の正社員は身の振り方を常に考える。
危機感を抱いた経営陣は、大きな人事異動を決行する。給料の高い部署に若手正社員、管理職を集め、給料の低い部署にアルバイト、パート、期間工、派遣を置く。
同一労働、同一賃金を掲げたものの、仕事がうまく細分化されていないから、どこかにしわ寄せが行く。正社員のサービス残業だった仕事が、非正規社員の時給にどんどん加算され消化される。定時に帰る正社員、残業する非正規社員。
最初はゼロサムだった人件費はいつしか増加する。
「来年の更新はできません、期間が満了しました。派遣期間終了です。」
かさんだ人件費は非正規社員の整理で3月末、9月末に一気に解消される。
「なぜバリバリ働いた私たち(非正規社員)はくびになるのか?」
「これは契約の終了なのです。正社員はただ働きするし、簡単に解雇できません。同一労働、同一賃金だとバリバリ働いてくれる非正規社員の費用がかさむのです。がんばりは評価します。しかし、同一労働、同一賃金、ただ法制が違うのです」
希望退職を募ってもよほど割り増ししなければ年寄管理職は辞めない。一時的に人件費はかさむが、同一労働、同一賃金である以上、若手正社員のインセンティブとして管理職のポストを開けておく必要が企業側にある。
管理職になれなかった年寄正社員は、給料の低い部署に追いやられる。生活水準が保てなくなって、借金なんかしながら住宅ローンを返済する。
全体のモラールは確実に落ちる。若手管理職の孤軍奮闘は続く。同一労働、同一賃金なのに、社内での格差は広がっていく。その頃には正社員ばかりで職務に仕事がつく。職務の取り合いは激しくなる。
むしろ会社は利益なんか出さなくてもいいから、まずつぶさない。それから雇用を確保するということが一番大事なんです。つまりどれだけ多くの雇用を確保したまま存続していけるのかというのが社会的なミッションなんです。企業の社会的責任:カフェヒラカワ店主軽薄
私個人としては利益をジャンジャン出して、プライドのために法人税を払うのではなく、(株主や社員に)分配しながら、雇用を維持していくのが、とりわけ地方の企業では重要なことだと思う。客=社員みたいな側面があるから、アグレッシブなリストラなんて簡単にできないし。
オランダでは同一労働、同一賃金マンセーみたいな放送を行っていた。
ただ、それにすると、(わが国の)40代、50代は生活水準を維持できなくなる人が多く出てくるのではないかと危惧する。それは横領だったり鬱だったりとゆっくりと進行する。
(もう以前からだが)ある種の(労務管理における)転換点にあって、好景気でなおざりになっていた。同一労働、同一賃金的流れにあるけれども、流れが急すぎると流されてしまうのが人間だ。諸条件が整う前にゴリ押しすれば、下流では必ず氾濫が起こる。
何事も穏やかがよかろうと思う。
ただ、環境の変化はまったなし。見通しのきく船頭が穏やかな流れを見つけ、すばやく行動することが必要になる。
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