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2009年04月02日

崩壊する世界 繁栄する日本 「国家モデル論」から解き明かす(書評・感想)

不況真っ只中の中で、各国の国家モデルを一種のビジネスモデルとしてバサっとまとめてしまうところがおもしろい。

国家と経済ってのはもうちょっと複雑ではないかなとも思うが、これくらいコンパクトにまとめてくれると読む気もするってもんだ。

スペイン経済とかメディアでは取り上げられないし、貴重な本。

崩壊する世界 繁栄する日本
崩壊する世界 繁栄する日本を読む。



  • 第一章 「国家のモデル」とは?
  • 第二章 アイスランド「自壊した“ヘッジ・ファンド国家”」
  • 第三章 韓国「失敗したモデルを引きずる“自称・貿易国家”」
  • 第四章 ロシア「原油安で崩壊寸前“オイル至上主義国家”」
  • 第五章 イギリス「フェイクマネーに溺れた“金融国家”」
  • 第六章 ドイツ「欧州を代表する“外需依存国家”」
  • 第七章 スペイン「不動産バブル崩壊と共に沈む“建設業国家”」
  • 第八章 中国「輸出減と輸入激減が進む“縮小成長国家”」
  • 第九章 アメリカ「マッチポンプが崩壊した“金融詐欺国家”」
  • 終 章 日本「繁栄する“新国家モデル”」
筆者は中小企業診断士である。同じ中小企業診断士の中でも世界経済について論ずることなく、役所の補助金目当てにチョロチョロしている人が多い。

そんな中で、経済学者の方と違って、ある視点から国家モデルを解き明かす。枝を見て森を論じる。

スペインの国家モデル
  • 観光や、スペイン語圏からの移民流入などを背景に不動産ビジネスを活性化させ、建設業を中心と成長する内需拡大型モデル
  • ドイツと同様に金融政策についてECBに委任し、ユーロ圏全体として輸入力を確保 P161
これくらいざくっと説明された方がすっきりする。日本以外の8カ国の国家モデルが3行くらいで説明しているから、わかりやすさは折り紙つき。

これがアイルランドだと金融(他国からの借金)、ロシアだと「オイル」、中国だと輸出ということになる。
アメリカは完全な過剰消費。
レバレッジ(梃子の原理)と書けば聞こえはいいが、要は自己資金でなく借金も加えて投資することで、ROEを高めていただけなのである。P201
資本効率を高めさせたのは株主であり、それが文化の国だ。そして小切手を切る、クレジットカード支払の慣習がある。

これらは、小切手なら数日、クレジットカードなら1ヶ月以上の借金である。過剰消費は多少抑制ができれても、この慣習は変えられないのではないかと思う。

筆者が言う「繁栄する日本」はどうか。日本は輸出産業にだけ頼っていると思われているが、
幸いと言ってはなんだが、日本語はあくまで日本国内でのみ通用する言語である。さらに日本は1億円人を越える人口を抱え、単一市場としても世界有数の規模である。結果、日本を独自の言語を活用し、独自の文化を高度に発展させることに成功した。P231
実際、統計を見てもかなり内需主導型の国と言える。輸入が多く、意外と国内で完結する産業も多い。あとは国内での消費をどう刺激するか。もっと言えば、政策でなんとかなるかも知れない。

つまり、富裕層とされる高齢者からいかにお金を引き出すか。彼らは国から手厚い介護を受ける。歩けるのにワゴンでリハビリに出かける。
ちなみに旅行会社以外ではコンビニを含む小売り業も「いろいろ」気がつき始めていると思います。私たちに一番目に見えるのは食事ビジネスですよね。なんだ けど、実はこっちは(食事ビジネスだけでなく)相当巨大な“とある市場”につながっており、この市場がものにできれば小売り業は超有望とちきりんは思って ます。また、郵便局もなかなかにおもしろい“プレーヤー”です。高齢者向けビジネスあれこれ

お金を使わない、「貯蓄こそ美徳」が高齢者のカラダに染み付いてる。単なるサービスの拡充・変更では消費刺激は難しい。

高齢者から若者への所得移転が必要で、高齢者には破滅的浪費をしてもらうしかない。貯蓄を公共財にまわす国ではなくなった。

相続税を段階的に引き上げて、マンションを建てさせて、資産をモノに変えさせる対策必要だ。死ぬまでに使わなくっちゃ。

まあ、「一番の票田が高齢者である」という問題に起因する。最終的選挙に行かない若者の問題でもあり、若者をひきつけない政治の問題である。

この問題に付き合う限り内需拡大はない。麻生総理は結婚するだけで「100万円の記念紙幣を贈呈する」ともいう。

年金などフローは減らすと餓死する人が出るから、やはりストックを吐き出してもらうしかない。

高齢者が「老後のため」と貯蓄する。それが続けば、「崩壊する世界、崩壊する日本」となってしまう。

スットクをムリヤリひねり出すのは資本主義的ではない。しかし、資産再配分をしなければいけない転換点かもね。といいつつ、親頼みの若者が多いのも事実。悩ましい。

「10年後 70歳以上の方の相続税を100%にします」これだけで消費は増えるはずだ。

本書は論旨が明快でよい本でした。

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崩壊する世界 繁栄する日本崩壊する世界 繁栄する日本
著者:三橋 貴明
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