aamall

2009年09月08日

できない上司はなぜ生まれるのか?憐憫と無責任のメカニズム

本人も望まず、まわりも望まずに管理職に昇進する人がいる。それを年功序列と言って十把一絡で語られていた。

これは年齢と功績を勘案したものではなく、「何も勤めていれば、績は当然あるだろう。それは序列に従って運用しよう」というなんとも適当な、それでいて(平均的と想定する)ライフスタイルにあった制度だった。

先輩は必ず先を行っていて、先を早く走る人、遅れる人はいるけれども、20年とか過ぎてからはっきりするのんびりした、勤務先を変えない人に安心して仕事ができる制度だった。

そんな中で、本人の不幸になり、まわりも不幸にする人事が発生する。



以下はたぶんフィクションで。

A課長
「D山君、管理職試験くらい受けなさい」

愚直な部下でも自分と仕事をしたら、情が湧く。管理職への推薦状くらい書いてあげる。

部下の無能は、自分の無能にもつながるから、けなすばかりでいけない。

さりとて、できない人を「できる人」とするのも困難。C、Dなど自身がつけた人事考課とも矛盾する。

だから、ムリムリ推薦状を書く。

「本人は無口だが実直にコツコツと仕事に取り組んでいる。成績などは振るわないものの、顧客から一定の評価も受けている。今後成長が期待される」

実際は
「本人は無口でリーダーシップをとることなく、作業も遅い。要領は悪い方。成績はダメだが、顧客からメガネフレームをもらっていたようだ。現在管理職としての能力はないが、管理職になって成長すれば、なんとか務まるかもしれない。昇進は異動を伴うケースが多いので、どこへ行くかはわかんないけど

管理職としての能力がないことは人事部も承知している。本人も管理職になることに消極的だから、昇進試験の成績も悪い。

しかし、直の上司でなくても憐憫の情が湧く。

B人事部長
「彼には子供が二人か。真面目なんだろ?もう40だよな。給料とか増えないとどうかな。そろそろ上げてもいいんじゃないか。人事の役員は せめて管理職くらいにしてやるのが会社の社会的使命だ なんて言ってたよな。一応(昇進候補)リストに載せて判断してもらおうじゃないか

D山君
40歳
B川君37歳 
A谷君31歳 

D山君はその名の通り評価にDだが、60歳定年なら、D山君は残り20年、それに対しA評価のA谷君は29年管理職として生きていく。

D山君の方がメリットは少ないが、不確実性は20年。A谷君は次回か、その次くらいには昇進するだろう。

リストを見た役員。

「D山君(って誰だっけ?)は成績が低いね。子供はいくつだい?もう10歳。あ〜そう。40歳か。B川君はどうだい。B評価か。まずまずだ。D山君、おとなしいから評価は低めなのかな。

昇進者
D山君(40)
B川君(37)

昇進できなかったA谷君に直の上司から励まし。「まだ若いからな。次は確実になれると思うからがんばれよ」「D山先輩っておいっ」

D山君は管理職の仕事に、はじめは懸命に取り組むが、すぐに筒いっぱい。次の上司のあたりはきつい。

「管理職なんだからもっとしっかりしてくれなくては!」

「D山あの件はまだなのか!」

「ちょっとこい!D山!だいたい・・・」

D山君のダメ管理職の烙印は1年目の新入社員にまで知れ渡る。ダメダメの痰壷。まわりもいつしか不幸にする(不満の捌け口と機能している場合もある)。

D山君は昇進を強く望んだわけではなかった。直の上司だって(年齢云々で)推薦はやむなくしただけだ。人事部もリストに載せただけだ。役員はD山君が推薦され、リストの載っていただけで選んだ。

直の上司はダメダメ管理職を押し付けられたと嘆き、人事部は「選んだのは役員だ!」という。推薦状を書いた元上司は「普通推薦くらいするだろう」と言う。

米国では、人事権はその場の上司が持つケースが多い。ボスに嫌われれば終わりだが、人事を間違えるとボス自身に降りかかる。

本件で誰に責任があったか?
  1. 強い願望なしに管理職に立候補したD山君?
  2. 推薦する気もないのに、推薦した元上司?
  3. 合格候補リストに載せた人事部?
  4. 最終決定を下した役員?
  5. 管理職として育成できなかった現上司?
1〜4には憐憫の情と無責任が少ほんのしずつあって、4は憐憫がまったくなく、無責任がある。管理職を育成する(40過ぎたらね)なんて難しいが、それでも数ヶ月で放りだすならやっぱり無責任だ。

犯人特定は難しい。雪だるま式の憐憫と無責任の積み重ねだけだ。

まあ、こういうことが起こるのだから、切迫した状況で(は会社が)ないと言える。(というほど余裕もなく危機感の欠如だけかも)

評価が低くても管理職として花開く人(自分ではできないが人を使うがうまいなど)もいるのは事実だが、実際35歳で転職が困難になるように、人生の半分をまわった人に革命が起こるのは稀。

ただ、こういう風に本人とその部下を不幸にするメカニズムがあるのではないのかなあと思った。

これのような事例は身近にあるのではないか。誰が押したでもなく、引いたでもない。10人の会社では起こらないことが社員の数が多くなることで起こる悲劇。

やっぱり規模によって必要とされる仕組みは違うのだと確信する。

と同時にD山君が「オレダメだブー。オラに元気を分けてくれ!」と明るく仕事に戻ることを期待する。ただ違う仕事につく必要はあるだろうけど。

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この記事へのコメント

1. Posted by wood   2009年09月08日 00:51
古い記事にTBありがとうございます。

しかし人事に憐憫の情は寄与度が低いと思います。そのような判断をした上司は、本質的に部下を可愛がっていないのでしょう。自分であれば言う事を聞く部下か、本当に仕事が出来る部下を推薦することでしょう。なによりも人事部が「ま、いっか」と言う判断をする事を想像できません。

日本の企業の人事評価システムでは「評判が第一」であり、思いつきの人事は当人にとっても推薦者にとっても後々不幸です。

私の経験した社会では有り得ない論理ですね、まぁそれが全てだとは思いませんが。多分あなたは私よりは幸せな人生を送られていそうでうらやましい限りです。
2. Posted by マリンゾウ   2009年09月08日 18:31
>woodさん
コメントありがとうございます。ポイントは自分の部下が昇進しても自分の部下にはならないという点です。
悪しき慣習とでもいいますか。
蓄積された評価は、企業の合併などがあるとかなり拡散するようです。
都市銀行を例にとれば、いつまでもDとかKとか言って数合わせが起こる。Dから5人、Kから5人。
彼らは必ずしも上から10人ではありません。5人には年齢など、きわめて客観性の高い指標が使われる。そんな感じです。
5 はじめまして。以前から楽しく拝読しております。
読みごたえのある内容ですねぇ。応援してます!

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