aamall

2010年02月27日

はじめての係長の教科書 パスでござる

「のれんに腕押し」、「糠(ぬか)に釘」・・・そんな言葉が頭をよぎる。年上の部下と10歳以上年下の新人。思うように動いてくれない。

それよりも今日は南山部長の機嫌を損ねた。気が重い。

北川係長は今日も営業に出なければならない。別部署のサポート課西島課長補佐と。。。


西島:「お疲れさま。北川係長行こか。」
北川係長は係長1年目。新規開拓の営業としてこの1年懸命に、西島を含むサポート課とともに、毎日のように飛び込み営業にまわった。たくさんのお客様と契約を結んた。今年度ももうすぐ終わり。目標達成は目前だ。
北川:「あの、いや、新規開拓した件で、部長の機嫌を損ねまして。。。」

西島:「まあ、いいわ。車に乗ってから話を聞くよ。」

〜半日前
北川:「契約を結びに行くのですが、東課長、一緒に行っていただけませんか?西島課長補佐も都合が悪いらしくて」

東:「すまん、ちょっと手が離せないので南山部長と一緒に行ってくれないか」

北川:「契約を結びに行くのですが、南山部長も一緒に行っていただけませんか?西島課長補佐も東課長も都合が悪いらしくて」
それを見ていた部長は機嫌が悪くなった。

南山部長:「先に課長に言うのはどうかな・・・。都合はつけれるけれども」

契約の際も部長の機嫌は悪いまま。この契約に限らず西島補佐を含むサポート課の人と一緒にやってきた。突然、部長を連れて行くのもどうかと思う。これまでもそうやってきたのになぜ機嫌が悪いのかよくわからない。

北川:「ってわけで南山部長の機嫌が悪いです。いままではずっとサポート課の人と契約してきたのに。それに南山部長も最近フットワークがいいわけではないし。」

西島:「なるほど、まあ気に病むほでもない。これから気をつければいいことだ。それはね」
西島:「北川係長は契約したお客様を部長や他の同僚につないでいっているかい?」

北川:「あんまりしてないです。まあ手間のかかることでもないですし。」

西島:「なら違うと思うよ」
西島が言うにはこうだ。

契約段階になっていきなり部長を連れて行くことに(北川係長にとって)違和感があるかも知れない。でも部長を契約の場に立ち会わせることによって「これから末永い取引をお願いします」なんて言えば北川の顔も立つ。責任も共有することになる。

また、部下が、時には、ゴールに入る寸前のボールを上司に譲ることも重要だという。華をもたせるってやつだ。

そうでなくても、数多くの取引先を開拓したのであれば、部下や上司をうまく使って、北川係長のお客様ではなく、当社のお客様になってもらうことが必要だという。自分が休んだり異動しても顔を知っている社員がいることはお客様にとって安心なことだし、用件の概要だってわかる。それを怠ると北川係長の異動によって関係がこじれるのではないか。
北川:「でも西島さんと一緒に行って、契約できたわけだから・・・」

西島:「僕らはあくまでサポートさ。話を中心にすすめたとしても、最終的に当社のお客様になっていただくだけでいいんだ。だから、はなからパスを前提にプロセスを踏む。西島さん、西島さんでは困るんだよ。実際すべての対応は時間的にも無理だしね」

北川:「部長に頼んで来てもらえないときはどうします?」

西島「来てもらうことよりも、来てもらうプロセスを踏んだかどうかが大事さ。それが東課長や他の人になってもいいんだけど、そうすることでパスは出しましたよというシグナルにはなる。ほうれんそうって難しい話じゃなくてね、耳打ちでいい「どうしましょう?」って。飲み会でも・・・来なくていいけど声だけかける・・・みたいなさ。課長を先に誘って断られ、部長を誘う。それは気分のいいことではないね。上か下へ流すのはスムーズ。下から水を流すのは・・・相当努力が必要だね」

はじめての課長の教科書はじめての課長の教科書
著者:酒井穣
販売元:ディスカヴァー・トゥエンティワン
発売日:2008-02-13
おすすめ度:4.0
クチコミを見る


北川:「お客様の都合と部長の都合も合わせなくてはいけないし、タイミングもわからないじゃないですか?西島さんみたいにいつでもタイミングを合わせてくれるわけではないし。さんざ書類は見てるんだから」

北川:「来てもらうってタイミング難しいじゃないですか?」

西島:「マニュアル化は難しいけれど、あえて言えば・・・契約できそうだ、契約のタイミングでいいんじゃない?」

西島:「どうせ来ないくせに、誘わないと・・・すねる人ってのもいるじゃない?自分から行くって言ってくれるのがいい上司だとは思うけれどね


西島:「中間管理職はパスのタイミングをいつも考えなくてはいけない。受け取れるよう根回しするパス。フェイクのパス。部下に刈り取りをまかせるのか?刈り取りの手柄を上司につけるのか。自分の成績は二の次でいいのさ。評価するのは上司だし、動いてくれるのは部下だからね」
北川は手柄を自分で一人占めにしたかったわけではない。ただ、平社員の時はお客様だけを見ていればよかった。今は違う。下を使い、上を使う。心情も慮る。すごく面倒くさい。
西島:「ちょうど契約になりそうな案件あったじゃない?白々しいけど、南山部長に行ってもらえば?」

北川:「・・・わかりました。一回言ってみます」

西島:「いいね。受け取るかどうかは別さ。まずパスを出すこと」

北川:「そうですね。・・・つきました。ここはまだ、社長とお合いできなかったとこです。」

西島:「じゃ行きますか、ここは係長が話を切り出してよ」

北川:「パスでござるか?」

西島:「そうでござるよ」

少し笑った。


にほんブログ村本ブログ 書評・レビューへ

新しい管理職のルール―課長昇進。今日から自分を守りなさい!新しい管理職のルール―課長昇進。今日から自分を守りなさい!
著者:高城 幸司
販売元:ダイヤモンド社
発売日:2010-01-09
おすすめ度:4.5
クチコミを見る




<関連記事>

管理職として気をつけたい30のこと

未知のものに興味を持つ人、リスクや脅威と考える人

この時期に思うリーダーシップのこと



blog49 at 00:01│Comments(0)TrackBack(0)clip!小説 

トラックバックURL

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔   
 
 
 

はてなブックマーク
Livedoorクリップ
0 Buzzurl