2007年09月12日
カリスマが教える本物の技術 スーパーベーシック催眠導入(書評・感想)
本書は催眠術のかけ方―初心者からプロまで今日から使えると催眠誘導の極意―さらに成功率アップ!「瞬間催眠術」もかけられるの続きとして大いに期待した。
がどちらかと言えば写真付きの実務指南書的側面があり、おいらは催眠術師を目指しているわけではないので、前2冊と比べると若干見劣りする。しかし林氏のおかげである種の疑念が晴れるのは間違いない。
しかし、実際には手品・奇術と同じで実技技能的な側面も強く、全体がくだらないと捨てるべき領域ではない。
でっこの3冊を通じて感じることは人間の反射であるとか仕組みであるとかそういうところを理解して、それらを駆使することできっと催眠チックな行為は可能であるし、営業などがうまい人間はまさにそういうテクニカルな側面を利用しているのではないか?ということ。ただそこいらを意識しているか否かに関わらず。
本書は被験者を必要とするという点でまあ実際に誰でも催眠術師の練習ができるというわけでもない。
被験者はお友達でも恋人でもはたまた騙して連れてきた人でも困るわけである。それらの人間の関係性についても本書では触れており、「医者と患者」みたいな位置づけで「術者と被験者」というポジションでないとうまくいかないことにも触れている。
そこいらは良質な信頼関係が成り立たないと催眠自体が成立しない。かといってのっかかり過ぎてもダメらしい。このポジションどりは大いに学ぶべきところだろうとか思う。
そもそも薬物でも使わない限り人を「自分の自由にする」ことはできない。ただ心理学的なアプローチ、暗示とかほのめかしを使ってそういう方向に仕向けるということはできうると思う。
またここで紹介した暗示文を一句一文字違わず与える必要はまったくありません。相手が催眠にかかっていれば術者側の意図を伝えるだけで充分です、逆に言えばどれだけ理解しやすく伝えるかが重要なのです。P61
催眠への導き方は本書を読んで頂くとして実際の催眠状態というのは酩酊状態とは全く違う。まあ例えるなら気持ちのいい美容室でのマッサージをしている状態に近いかもしれない。
マッサージしている美容師の手の動きになんとなく誘導されてしまうことはないだろうか?そういう状態であると考えると、自分に不利なことは決してしないあたりの理解はできると思う。気持ちがいいからこそ、そこに信頼があるからこそ一定の無意識に働きかけることができる。
心理学の多くがある現象に対する状態の説明はできるが解決のほとんどは心理学を学んだだけでは足りない。実際精神科の多くが働きかけというより腰を折らない聞き手としてその能力を発揮する。
「しかし心理学の方がどうなんだい?」
「あれは文学の部類さ。共感できる者のみに有効なんだ。科学の産んだ文学だ。」
「〜中略〜心理学は個人個人の患者からサムプルを採って一応は一般的な法則を導き出そうとするだろう?〜中略〜最終的には個人に還元されてしまう、文学的なんだな。」
姑獲鳥(うぶめ)の夏 (KODANSHA NOVELS) P23
まあ、心理学を体系的に学んだわけではないが・・・ここいらを生かそうと思うと催眠術や自律神経訓練法などの技術面も学生には着目して欲しいものだと思う。
眉につばを塗りながらでも林氏の著書はそこいらの理論が充分イ踏まえているし、実際心理学の応用としては理にかなっている。
ただし、それらはあくまで被験者との信頼性の上にできうるものであるし、被験者が望むものでなければならない。
つまり一定の見えにくい(あるいは本人が意識していない)部分を具現化してあげるというところか。そういうところかな。
現在のところ筆者はこの分野で第一人者であるし、この分野の限界も踏まえている。
信用するかは自由であるが・・・この分野の応用は今後発展するものと思われる。フロイトの偉大なる発見「無意識」は意識されない分野だけに・・・まだまだ研究のよちがある。
なにせ・・・眠気を催すくらい・・・気持ちがいいはずの分野だから。




