2007年11月08日
似せてだます擬態の不思議な世界(書評・感想)
- プロローグ -- 擬態とは何か
- 第1章 だまし・だまされる生きものたち
- 一 強いキャラクターにあこがれる -- ベイツ型擬態
- 二 みんなで似ればこわくない? -- ミューラー型擬態
- 三 目立ちたい? 目立ちたくない? -- 標識型擬態と隠蔽型擬態
- 四 だまして食べてやろう -- ペッカム型擬態(攻撃型擬態)
- 二 みんなで似ればこわくない? -- ミューラー型擬態
- 第2章 だましのテクニック -- 標識型擬態と隠蔽型擬態
- 一 なぜ目玉に似せるのか? -- 標識型擬態 その1
- 二 道路標識にご注意!? -- 標識型擬態 その2
- 三 気持ち悪いシグナル -- 標識型擬態 その3
- 四 植物になりたがる昆虫 -- 隠蔽型擬態
- 二 道路標識にご注意!? -- 標識型擬態 その2
- 第3章 紋様をつくりだすしくみ -- 擬態の分子メカニズム
- 一 豹柄の模様をつくるしくみ -- 数理生物学的アプローチ
- 二 チョウの翅に紋様をつくるしくみ -- 分子生物学からのアプローチ
- 三 紋様に色をつけるしくみ -- 生化学からのアプローチ
- 二 チョウの翅に紋様をつくるしくみ -- 分子生物学からのアプローチ
- 第4章 擬態するカイコ
- 一 カイコのカムフラージュ術
- 二 遺伝子から見るカイコの擬態
- 第5章 アゲハに見る擬態の不思議
- 一 尾状突起
- 二 シロオビアゲハの複雑な戦略
- 三 蛹のカムフラージュ
- 四 鳥の糞から緑の葉へ -- 幼虫の華麗なる変身
- 五 幼虫の紋様のつくられ方
- 二 シロオビアゲハの複雑な戦略
- 第6章 だまされるものか -- 擬態を見破る苦労
- 一 視覚を駆使して見破る
- 二 学習して見破る
- 第7章 視覚以外の五感でだます
- 一 五感を利用しただましのテクニック
- 二 音を模倣する -- ものまねをするインコ
- 三 匂いの擬態 -- ラフレシアの匂いは魅力的?
- 二 音を模倣する -- ものまねをするインコ
- 第8章 分子も擬態する -- 相互作用を真似る世界
- 一 人体に侵入するウイルスの擬態
- 二 擬態するタンパク質
- エピローグ -- 人間社会におけるだましのテクニック
- 参考文献
- あとがき
- 参考文献
第一章と第二章で紹介されるさまざまな擬態の実例は実に楽しく、動物ファン、特に昆虫ファンには堪えられないのだが、その一方でこうした例は文字通り「絵になる」こともあって、TVの人気コンテンツでもある。スレた人なら「もうそれ見たし」と言うかもしれない。
前半はおっしゃるとおりそれだ。ナナフシを見たり、蛾が白壁にとまったときに抱く「お前、完全にばれてるよ」感と、「へえ感」を同時に抱く。
しかしテーマはとどまらない。擬態を紹介するのみならず、生物が生きていくための知恵を超えて幾世代もかけて「自分を変化させる」・・・その謎に迫ったのが本書だ。
擬態には相手が錯覚して捕食されにくくするまたは捕食しやすくするようになることである。人間で言えば丸坊主にネックレス、トランプ柄のセーターでも着れば(弱くても)そう相手は寄ってこないだろう。またいかにもこぎれいなサラリーマンなら(たとえ悪人でも)相手も多少胸を開く可能性がある。
それを着替えではなく、体そのものでやってのけるのが擬態。昨日テレビでふくろうが痩せてみせて精悍な鳥を装っていた。人間から見れば滑稽な姿である。
しかし、虫や動物にすれば瞬時で必死の反応。そして人間が「目ん玉みたいなあの柄の芋虫気持ち悪り〜」も自分を守るために何世代もかけて作ってきた進化だと思われる。
本書を特徴づけるのが、「情報の発信者」と「情報の受信者」に注目する点。
虫や動物が私たちと同じ色、匂いを感じているわけでは決ない。彼らに意見を聞くことができない以上わからない。「情報の発信者」が必ずしも「擬態」を決定づけるのではなく、受信者が決定づけることがあるということ。
うまく伝えることはできないが、「生まれてこの方擬態でござる」な生物がいることはたしか。人間がそうみなしているだけだとしても遺伝子とかそういう部分で「なにかに似ている」ことを生きる術としていることになにか胸を揺さぶられた。といっても胸板は薄い。
生物音痴な私でもすらすらと読めた。とにかく「擬態」な虫なんかを見たときににんまりできることは請け負う。
さておき、人間だけは遺伝子に関わらず擬態できる。「夜の蝶」とか「エセ ベッカム」(ヘアスタイル)。そうやって相手の錯覚を誘うがあくまで相手は人に限定される。
つまり人間には人間しか敵はいないということか。
情報が複雑化する現代社会においては、自然界に存在しない新手の擬態戦略が次つぎと登場するだろう。私は瞬間の判断を避け、情報の質を常に吟味するようにしないと、いつ何時「人間界のハナカマキリ」の餌食になってしまってもおかしくない。p 198
幾世代もかけている時間は私たちにはないけれど、擬態よりも中身を変えたり、身なりを変えることは簡単だろう。
→生物と無生物のあいだなみに流麗な文章で私のようなトーシローにもわかりやすい傑作だと思う。
DAN氏に感謝。書評を見なければ絶対に手に取らなかったであろう1冊。![]()
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