2008年02月11日
ロストジェネレーションーさまよう2000万人(書評・感想)
目次
- はじめに
- 第1章 なぜ、ロストジェネレーションは生まれたか
- 第2章 ロストジェネレーションの落ちた罠
- 第3章 ロストジェネレーションはさまよう
- 第4章 ロストジェネレーションは挑む
- 第5章 ロストジェネレーションの未来
- 第6章 ロストジェネレーションは動き出す
- 特別付録 ロストジェネレーションをつかむには「SPA」×「R25」×「AREA」3誌編集者が語る
- おわりに
最近、ロストジェネレーションを超えて「ポストロストジェネレーション」とまで言われている。意味までは知らない。
さて、こういう話は必ず、
アルバイトなどを転々としながら食いつなぐ、B子さんのような「フリーター」も、この世代では目立つ P21サイバーエージェント社長の藤田晋(33)さんは、有馬さんが走ってきた道にシンパシーを感じている。「僕たちは、既存の価値観が失われる絶望の中に生まれ、自分たちで開拓してきた世代ですから」P121
とケータイワーカーや起業して成功した一部の人間だけが取り上げられる。もしくは成果主義にさらされる正社員の話だ。
しかし、これは現在24〜34歳だけの問題ではない。たしかに就職氷河期は一部の人材不足懸念により払拭されつつあるけれども、それでもロールモデル(模範的な生き方)を妄信して会社員をすることは困難な現状に変わりはない。
ただ、これを世代の塊として考えた場合、団塊ジュニア世代以後が不利益を被るのは間違いない。それは個々の問題とは別に社会保障を初めとする本当の団塊世代を支えていかなくてならないからだ。
それが消費税の増税なのか?保険料の引き上げなのか?いずれにしろ、所得が上がらない中でやりくりしていかなくてはならない。
恐怖の人生ゲーム
A 夫:正社員+妻:正社員
B 夫:正社員+妻:専業主婦
C 夫:非正社員+妻:非正社員
D 非正社員の男性
のシュミレーションで何倍もの差がつくP155〜
はアタリマエであって、企業としても国としても全員を正規雇用、またはあとの処遇を用意できないことに起因する。
つまり、現状正社員の方であっても早晩選択を迫られる。ワークシェアリングのように安い賃金でみなとともにに働くか?成果主義のように企業内格差がつくようにするか?
「せめて初級管理職くらいは定年までにしてやりたい」
とある役員の方がおっしゃっていた。心情的にはそれはわかる。しかし、それは永続的な成長モデルを描けない限りとりもなおさず初級管理職の処遇引き下げを意味する。さらに今の大量に採用された新入社員はその温情判決で管理職になったものに仕え、成長モデルをより困難にする。
就職氷河期だったおかげで同期は極端に少ない。ゆえに、年功序列の最後の甘い汁をすすれたのかもしれないし、そうではないのかも知れない。
フリーター、ニート、非正規社員は社会が生み出したものかも知れない。しかし、恐怖の人生ゲームは単に雇用形態で決定するものでもない。30年も50年もフィックスするものとも思えない。
ただ、目の前のものを打開する課題が違う。それらを一つ一つ個人で解決していくほかはない。
本書が示すのは世代の問題点ではなく、たんにそういう時期を説明したに過ぎないと私は思う。問題の解決は正確な問題認識から。そういう意味でベストな1冊であると思う。


