2008年03月22日
バカな人事!(書評・感想)
- 第1章 日本の会社の「人事」はここが間違っている
- 第2章 「公平な評価」が不公平を生み出している
- 第3章 社員として知っておかなければならないこと
- 第4章 「人事」の本当の目的とは何か
- 第5章 「人事」で会社のこれからが変わる
他社の人事をマネすることに意味はありません。
はじめに
概ね同意で、新興企業以外はマネをしてすぐ業績が上がることはない。企業には歴史があり、風土がある。制度をひっぱり込んでもうまくはいかないし、うまくいかなかったときの被害は甚大だ。
本書でクリップしておきたいのが、
「多面評価(360度評価)」にも多くの問題点があります。〜中略〜アメリカでは「360度サーベイ」と言われるもので「サーベイ」という意味からもわかるとおり、本来の目的は「評価」ではなく調査です。P47
このへんは下から上を評価する場合に、試験的に行なった経験から言うと、「下から上を評価するべき」ではないと考えている。
というのは評価は責任を持って行なうべきで、単なる人気投票や誹謗中傷になっては困るからだ。上は下を育成する必要があるため、評価することは自分自身の評価にもなる。しかし、下は責任がない。好き嫌いが反映されるだけだ。そういう極端な部下を(評価されたのは私ではなかったが)見てぞっとしたものだ。サーベイとしては意味はあるが、それ以上となると評価に対する責任を部下が持たなくてはいけない。
とはいえ、人事制度をかじったことがある人なら本書に何か足りないと感じるはずだ。 筆者は成果主義は当然のものとしながらも、
問題は、人事がすぐに出る結果ばかりを求めるため、ツノを出す余裕がなくなり、ツノがあってこそのコンペイトウを丸くさせてしまうことなのです。P72
と長いスパンで人的成長を促す記述がある。これに対して本書に示唆はあるが、明確な回答がない。そこは「(短期的な)成果は報酬に、(長期的な)能力は地位に」と言い切ってもよかったのではないか?と思う。成果を何とするかはもちろん個々の企業に委ねられるわけだが、成果をどのように明らかにするか、部分のミスでなく、包括的に成果主義がうまく運用されない理由をもう少し明らかにすべきだ。
私は制度云々の前に人事権というものを本社人事部がかなり大きく持っていることが問題だと思っている。
昇進や評価の部分で「人事部」が大きな権限を持つと、直接の上司が真剣に評価しなくなる。生殺与奪を握るのではないけれども、成果=評価=仕事なのだから、(人事部など関与する)調整が少ない方がさらに評価する責任が増す。
ゆえに、何年にわたっての何人かの上司が話し合って昇進を決めればいい。「人事部が選ぶ」というブラックボックスが介在してしまうと、その部下を昇進させた責任はどこかに飛散してしまう。人数に限界があるならば、それを推薦した上司同士が徹底的に話し合うべきなのだ。人事部というのは本来調整役に徹するべきでこの部分はアメリカの諸制度に大いに習うべきだろう。
会社で働く誰もが経営者のように考えることです。P193
筆者の言うことはもっともなんだけれども、ムリだ。管理職となっていく過程で、権限と責任が明確になり、醸成されていく。何にもないヒラに「経営者としての感覚」を求めるのは酷だ。人事権の切り離しがもっとも責任を明確にして権限を下に下ろしていくのがもっと近道だと思う。
絶対成功する成功本がないように、絶対うまくいく人事制度もない。しかし、年功序列・終身雇用など今まで通りやっていては年金と同じように制度疲弊は明らかだ。
成果主義もまだいい結果を出している企業は少ない。とにかくわかったことはコンピテンシーなどとアメリカの制度を輸入しただけでは、風土や文化、何より自社には歴史があって、うまくいかないことだ。なじみのないものは失敗を繰り返さないとなかなかね。
ただ、人事だけに自社不振の原因を求めるのは分析不足。人事は会社の部分であって、全体ではない。春の最大の関心事ではあるのだが。
うまく運んでもわからず、失敗すれば批判の的。それが「人事」。筆者の言う「公平」とは青いとりのようなもの、ここは間違いないようだ。どうやろうとすべての社員を満たすことができないのが人事で、本書ではミドルパフォーマーにフォーカスすべきとなっている。割り切りをどこでつけるか?が人事制度の鍵だろう。やっぱり人事行くのは微妙だ。そして最終章の「人事」で会社これからが変わるは「郵政民営化すればすべてうまくいく!」と同じ。それも青いとりだ。インセンティブで人が動く!ところは同意しかねる。
ラジカルな題に惹かれるでなく、そういう過程での(すべての人事部が)反省材料とするに有意義な一冊だとは思うが、バカといわれたら人事担当者は買わないのではないだろうか?
「勝ち組企業」の就業規則―人が動く!組織が変わる! (PHPビジネス新書 48)
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この記事へのコメント
僕は不平等というなの平等と考えてもらうしかないのではないかと思っています。
著者が言いたかったのも、まさに安易に他社や海外の真似をしてもなんらメリットがない、という点で、そもそも何のための人事なのか、を考えてほしい、ということでした。
おっしゃるとおり、人事ご担当者の方にはやや物足りない内容かと思いますが、本書は、人事に精通していないビジネスマンの方に読んでいただきたい、という趣旨で制作しましたので、具体性を取り除いた部分もありました。
ちなみに、著者名は「中村壽伸」です。
書評、ありがとうございました。多謝!
お名前は訂正させていただきました。編集がんばってください。




