2008年04月12日
地頭力(じあたまりょく)を鍛える(書評・感想)
- 第1章 「地頭力」とは何か
- 第2章 「フェルミ推定」とは何か
- 第3章 フェルミ推定でどうやって地頭力を鍛えるか
- 第4章 フェルミ推定をビジネスにどう応用する
- 第5章 「結論から考える」仮設思考力
- 第6章 「全体から考える」フレームワーク思考力
- 第7章 「単純に考える」抽象化思考
- 第8章 地頭力のベース
- 第9章 さらに地頭力を鍛えるために
昨今、地頭(じあたま)、フェルミ推定がブームらしい。暗記の知識はすぐ陳腐化し、コミュニケーション能力だけでは薄っぺらい。そこで注目されているのが地頭力。
「富士山をどう動かしますか?」 クローズアップ現代でも取り上げられた入社試験面接における荒唐無稽な質問。答えがあるっぽくて、ないっぽい。
フェルミ推定とは
(いくつもの仮定や推定を積み重ね)つかみどころのない物理量を短時間で概算すること
なるほど。ロジカル・シンキング―論理的な思考と構成のスキル (Best solution)などでは物理量、つまり数字はそれほど問われることはなかった。論理的思考は人を説得するだけの流れは必要だったけれども、数字は必要ない。
本書を読んで、一番最初に思いついたのが数に強くなる (畑村洋太郎著)。二番目がロジカル・シンキング―論理的な思考と構成のスキル (照屋華子/岡田恵子著)。三番目が魍魎の匣―文庫版 (京極夏彦著)などの京極堂シリーズ。少ない情報量から大筋で外れない仮説及び結論を作っていく。
数字はたしかに説得力がます。問題に解答があるとは限らない。手早く説得力を増す快答の技術。
「日本に電柱は何本あるか?」
制限時間3分、電卓・PC使用不可、一切の情報参照不可 P50
ここで「そんなの考えようがない」は不合格。すぐにネットで調べた人も不合格。ようは因数に分解したアプローチが必要というのが本書。
ちなみに私の答えはこう。
人口1億2千万 一世帯あたり3人 世帯数 4000万 一世帯あたり必ず一本、かつ変電所から1本必要 と考えると 4000万×2=電柱は8000万本。
自分で考えてすぐしょぼいときづく。しかし、フェルミ推定で重要なのはある種の仮説と物理量。知っている情報をいかに組み合わせるか?
本書を手にとっていただければ、私の回答のしょぼさがわかる。しかし、ブラッシュ・アップは可能な気がする。
ピピッと閃いて、パパっと答える。たしかに頭がいいと思える。
仮説思考における次のポイントは、決められた制限時間にとにかく答えを出すという「タイムボックス」の考え方である。三分なら三分なりの、〜中略〜三週間なら三週間なりの答えを出すのが重要である。P114
即答とは言わないまでも「頭がいい」には回転というかスピードも重要だ。「○○とかけて△△と解く」「そのこころは?」何分もたってから答えるのでは笑点には出られない。
ただ、この手のフレームワーク本はともするとその考えにとらわれる。ロジックはロジックに過ぎない。
ある事象(結び)に説明体系をつけないのが、マジック。ある事象(結論)説明体系をつけたのがロジック。あとはどれだけ正確なアプローチができるかということだけ。
本書を読んで自分のまわりにいる人のことを考えた。ひたすら情報を集める(ご丁寧に綴り込んで)が、結論が出せず、抱えている人。自分の意見に固執して自分の座標を変えられない人。具体例は豊富だが、抽象化・一般化できない人。そんな人を思い浮かべる。
これらのほとんどの人が仕事ができても「頭がいい」とは思われない。もちろん自分はどうかはわからないが。
フェルミ推定が万全のフレームとは言わないけれども、材料を集めたが組み立てられない、常に迷いが出る、そんな人には本書は有効かも知れない。
また、知識はあるのだろうけど(例えば学歴とか、試験にばんばん受かるとか)頭がいいとは思えない人の類型化にも役立つ。あの人がそう思えないのかすっきりする。
「頭がいい」と思われたい。そう思われることが自分のモチベーションにもつながる。「頭がいい」と思われるからこそ、頭をつかって知識をためて、組み立てる。
頭がよくなりたい・・・やっぱり大した努力もせずに。