2008年10月21日
調べる技術・書く技術(書評・感想)
魂を揺さぶるとまでは言わない。けれども、心の片隅に残るような文章を死ぬまでに書いてみたい。
決して
「湯けむり3人IT姉妹 セレブ妻の隠された過去 ポロリもあるよ 秋の大祭典 残虐スペシャル このあとすぐ!」
みたいに過剰包装するでなく。
できれば、平易でたんたんと、しかし心の中にとどまってあるときに広がるような文章。
調べる技術・書く技術 (野村進著)を読む。
- 第1章 テーマを決める
- 第2章 資料を集める
- 第3章 人に会う
- 第4章 話を聞く
- 第5章 原稿を書く
- 第6章 人物を書く
- 第7章 事件を書く
- 第8章 体験を書く
惹きつけられる文章の多くが、書き出しでその後を暗示させる。書き出しの大切さは、いくら強調してもしすぎではない。〜中略〜書き出しで見放されたら、あとによいことが書いてあっても、読んでもらえない。だからこそ、書き出しに全神経を注ぐべきなのである。P132〜133
どこまでもだらだらといい加減な傾斜が続いている坂道を上り詰めたところからが目指す京極堂である。梅雨も明けようかという夏の日差しは、あまり清清しいとは言いがたい。P8 姑獲鳥の夏 (講談社文庫)起こるであろう陰鬱な雰囲気が短い文章で漂う。
僕は三十七歳で、そのときボーイング747のシートに座っていた。その巨大な飛行機はぶ厚い雨雲をくぐり抜けて降下し、ハンブルク空港に着陸しようとしているところだった。十一月の冷ややかな雨が大地を黒く染め、雨合羽を着た整備工たちや、のっぺりと空港ビルに立った旗やBMWの広告版やそんな何もかもがフランドル派の陰うつな絵の背景のように見せていた。やれやれ、またドイツか、と僕は思った。P7 ノルウェイの森 上 (講談社文庫)
村上春樹の流麗で静かな書き出し。主人公のある種の踏ん切りを感じさせる。
本書はノンフィクションの調べ方・書き方についての本であるけれども、私のようなしょぼいblog書きにダメだしとアドバイスをする。
推敲のさなかに「もうこの辺でいいだろう」と中途半端なところで妥協してはいけない。自分がすっかり納得できるまで、書き直しをすることが、文章上達の秘訣である。P150
ご購読いただいている方々。この場を借りて「ごめんなさい」推敲なんてうpして、気づいたら・・・している程度。
もちろん文筆で飯を食ってないけれど、それでも読んだ人の失望は最低限で抑えたい。
うまくなるにはやっぱり書き続けること。書いては直し、直しては読み。声に出してはじめてリズムのある文章になっているかわかる。
文章を調べることも書くこともない仕事ってあるのか?
たぶんほとんどない。
メモですら美醜が出る。美醜はその人の内面の一部としてとらえられ、かたちづくる。
誤解も理解の一側面。「それ誤解だよ」と言ったところで書き手の力量不足。
書き手として必要なことは本書で網羅されている。常に手元に置きたい一冊だ。

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